企業がとれる対応と懲戒解雇の基準を解説
どんな職場でも、大小を問わず必ず頭を悩ませるのが「人間関係」です。
性別や年齢、育ってきた環境、仕事の価値観が違う人が集まる以上、摩擦が起きるのは避けられません。
私自身、過去に営業部に所属していたときに、中途入社した後輩が周囲を不快にさせる言動を繰り返していたため、何度も注意をした経験があります。
働く側には「モームリ」と思えば退職という選択肢がありますが、では企業側が「モークビ」という処分を下すことはできるのでしょうか。
「問題社員を“辞めさせる”ことはできるのか?」
この疑問は、多くの管理職・リーダーが一度は抱くものです。
そこで今回は、企業がとれる対応・懲戒処分の種類・懲戒解雇が認められる基準について、公的に示されている事実をもとに整理します。
問題社員が生まれる職場の背景
職場には、年齢や性別、育った環境、仕事の価値観が異なる人が集まります。
そのため、人間関係の摩擦が起こる可能性は常にあります。
実際、本人に悪意がなくても、言い方や態度によって周囲との衝突を生むケースもあります。
私が経験した後輩も、本人に自覚はなくても結果的に周囲を不快にし、注意せざるを得ない状況が何度もありました。
こうした「本人は気づいていないが問題行動となっているケース」は、どの職場でも起こり得る事実です。
企業が取れる懲戒処分の種類と基準
企業が社員に対して行う処分は、就業規則に定められた範囲内で行われます。
一般的に公開されている代表的な処分には以下があります。
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「戒告」(注意を与える)
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「減給」(給与を一定割合下げる)
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「出勤停止」(一定期間の就労を禁止する)
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「降格」(役職を下げる)
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「懲戒解雇」(最も重い処分としての解雇)
懲戒解雇は最も重い処分で、著しく職場秩序を乱す行為など、重大な事由がある場合に限り行われます。
また、懲戒処分は「処分の妥当性」や「社会通念上相当と認められるか」が重要なポイントとされています。
懲戒解雇が認められる事例
懲戒解雇は、就業規則で「重大な非違行為」とされる場合に限られます。
以下は、厚生労働省の指針や、公的に公表されている判例に基づく代表例です。
● 無断欠勤・職務放棄
・長期間の無断欠勤
・度重なる無断欠勤により業務に支障が出たケース
(例:正当な理由なく14日以上欠勤し、懲戒解雇が有効と判断された事例)
● 横領・着服
・売上金の横領
・経費の不正請求
金銭に関わる不正は刑事事件に発展する可能性もあるため、典型的な懲戒解雇事由です。
● 情報漏洩
・顧客データの持ち出し
・競合企業への情報提供
企業の信用を大きく損なう行為として扱われます。
● 虚偽報告・数字の改ざん
・営業成績の水増し
・勤怠データの改ざん
勤怠不正を理由に懲戒解雇が有効とされた事例もあります。
● 暴力行為・ハラスメント
・同僚への暴力
・重大なパワハラ・セクハラ
職場環境を著しく悪化させる行為として認められやすい項目です。
● 社内規程の重大違反
・会社設備の私的利用
・無許可の副業による業務支障
企業ごとに定義は異なりますが、就業規則に記載されていれば懲戒事由となります。
「懲戒解雇」は厳格な基準のもと判断されるため、企業が裁量で自由に“辞めさせる”ことはできません。
ここを理解しておくことが重要です。
実際に起こった社内処分の事例
私が新卒で勤めていた商社では、所長クラスの複数名が平日の就業時間中に経費を使ってゴルフをしていたことが問題となり、降格処分を受けた出来事がありました。
営業マンに限らず、どの部門でも真剣に働いて得た会社のお金を、個人の利益のために使われてはたまったものではありません。
このように、会社の資金を不適切に使用する行為は重大な規律違反であり、処分が下されることは珍しくありません。
繰り返しになりますが、処分の内容は会社ごとに就業規則で定められており、それに基づいて判断されます。
処分を行う際に企業側が避けるべきリスク
懲戒処分は法的にも慎重な取り扱いが求められます。
誤った手順を踏むと以下のリスクがあります。
- 不当解雇として争われる
- 企業の信用が損なわれる
- 損害賠償請求につながる可能性がある
- 労働基準監督署からの指導対象となる
企業が処分を行う際は、
「事実確認 → 指導 → 記録 → 就業規則との照らし合わせ → 処分の決定」
というフローを踏むことが一般的です。
懲戒解雇がもたらす影響
懲戒解雇は重大な処分であり、一般的に以下のような影響があることが公表されています。
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「退職金が不支給になる場合がある」
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「再就職に影響する可能性がある」(企業は履歴書で退職理由を求めることがあるため)
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「失業保険の給付制限が発生する場合がある」
これらは制度として公表されている事実です。
一方で、「どの程度バレるか」など個々の事情に左右される部分については不明確です。
まとめ
問題社員に悩む職場は少なくありませんが、企業が「辞めさせる」という行為には厳格な基準があり、安易に判断できるものではありません。
感情的な処分は企業にとっても大きなリスクになります。
一方で、働く側も職場環境に悩み、退職代行などを使って離れるケースが増えています。
どちらにとっても、職場のトラブルは大きな負担です。
最終的には、「制度を知り、適切な対応をとること」が双方にとって最も安全で現実的と言えるでしょう。


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